保存食となった青いトマト
長野本社 クリエイティブ局ディレクターの K. N.です。
私の住んでいる長野県北部の近頃の気候は、暖かな日と寒い日を繰り返しながら、寒さの中にも春の気配を感じる頃となってきました。我が家では昨年の秋口から冬、そしてこの春先にかけてちょっとした保存食を楽しんできました。その保存食とは「ミニトマトのピクルス」です。昨年、菜園で育ったミニトマトが、今、弁当や食卓に欠かせない存在となっています。
春先の種まき~定植、定植~収穫までに約4カ月以上費やすこととなり、ど素人ですが、栽培途中の脇芽取りや病虫害駆除などに苦戦しながらも、最初のピンポン玉程度の大きさの実を収穫するに至った時には小さな感動を覚えました。
9月の後半頃ともなると、トマトの好む強い光も徐々に弱まりはじめ、それと比例して実の色も赤や青色とまだらとなり、やがて生育途中の青いトマトだけが残る苗となって栽培終了を迎えることとなりました。
私はこの残った青いトマトの利用方法を知らず、一度はこのまま苗ごと抜いてしまおうかなぁとも思ったのですが、他の利用方法をネット検索したところ、「青いトマトのピクルス」の紹介にたどり着き、早速料理にチャレンジしてみることに......
やがて青いトマトはピクルスの瓶詰めとなって台所に並び、その光景は何だかほのぼのとして、そこだけ時間がゆっくりと流れているようでした。
この青いトマトのピクルス作りを通して、ピクルスは「本来食べられるはずの食材を無駄にしないために、最後まで活かす先人達の知恵と工夫によって作られた大切な保存食」でもあったことに改めて気づかされました。
同時に、昨今の日本での他国に比べた食品ロスの量はとても多いとのニュースが不意に頭の中で気になり始めました。
一人当たりの食料廃棄率が世界一と言われている現状を知らされると、自分にも出来る小さな行動として、最後まで何かに活かす工夫を暮らしの中でちょっと試してみることも、この一歩につながるのではと感じたりもします。
「料理一品」とは言うものの、食卓に上がるまでの過程を思うと、そこには奥深い時間が存在していること、素材の活かし方や方向性を決めてどんな料理にするかという一連の作業が、なんだか普段の目的に向かって制作するデザイン過程とよく似ていたことにも気づかせてくれた貴重な体験となりました。
ご馳走様でした。