シンソウは藪の中...!
こんにちは。長野本社 第1クリエイティブ局CDのSライです。
そろそろ社員blogに投稿してみようかと思い立ったは良いのですが、さてどうしたものかと悩みました。
そもそも書くからには、好きな趣味を持っていたり、どこそこに旅行に行ったりして
他者にその良さを上手な文章で紹介して、共感を得たり、興味を持ってもらえるような潤沢なネタと行動力を持ち合わせた人には向いているのでしょうけど...
かく言う私はというと完全無趣味。敢えて言うならテレビが友達の休日引きこもり中年です。
さて、どうしたものかと腕組みしながら、ふと見上げた視線の先にカレンダーが目に留まりました。
おお!そうか!もう6月ではないか!! 私は拳を心の内で力強く握りしめガッツポ?ズ!!
いざ行かん!とタンスの奥からディープグレーカラーのジャンプスーツではなくツナギを身にまとい、
ネイビーブルーのロングレインブーツ(長靴)と漆黒のNIKEのロゴ入りリュックサックを用意し、
タオル2本と欠かせない相棒の軍ティー(軍手です)をNIKEへぶち込み
朝の6時から、ひとり、標高2,000m級の山頂付近目指して車を走らせ、途中、お決まりのコンビニに立ち寄り、
いつもお決まりの「かりかり梅」と「赤飯おこわ」のおむすびと「濃い茶 お?いお茶」を買い込み
残り20分ほどのワインディングロードの道程を一気に駆け上っていきました。
これは、一体何の話だと首を捻っている皆さんは、「根曲り竹」というものをご存じでしょうか?
「根曲り竹」とは、学名「千島笹」といわれるらしいです。標高の高い山に自生する大型の笹の一種らしい。
その千島笹、別名「根曲り竹」の笹藪の根元から生える新芽のことを地元では「タケノコ」のと呼び親しまれています。
「タケノコ採り」は長野県北部(北信州)以北では昔から親しまれていて、5月から6月いっぱいぐらいが採取時期です。特に私より上の世代の人たちは男女問わず期間限定の大好きな趣味?というか現代風に言えばアクティビティの一つで、
一度この「タケノコ採り」の魅力にハマッた人は、毎年採りに行きたくなるものらしいです。もちろん私もその一人です。
毎年この時期、社内で募って志賀高原の笠ヶ岳の南側斜面に入りますが、
分け入る笹藪は一般的に想像される、「かぐや姫」がいたような竹藪ではなく、正に藪そのものなのです。
そしてここは、斜面も急で、毎年遭難者が何人か出たりして、ニュースになったりもします。近年は熊も出没するデンジャラスゾーンです。
なのでいつもは、同僚達と一緒に入る訳ですが、中に初体験という人がいると色々注意事項をレクチャーしながら藪道を進みます。
笹や竹で目を突かないように、とか。落とし物をしないように、とか。遭難を防ぐため仲間とあまり離れないように、常に大きな声を出して周りに人がいることを確認すること。突然笹藪が途切れて崖が現れることもあるので、周りの笹竹をつかみながら進むこと。など様々。
少し説明が長くなってしまいましたが、そうこうしているうちにタケノコ狩りのスタート地点、山頂付近の駐車場に到着!
前夜から降っていた雨はやみ、当日はやや曇天ながらも雨もなくタケノコ採りには絶好の条件。
今年は私ひとりなので、ひっそりとやや心細くもありながら、しかし"勝手知ったる何とか"と気合いを入れる!
長靴を履き、タオルを1枚は首に巻き、もう1枚で帆被り(ホッカブリ)。相棒の軍手をし、その上から手甲(テッコウ)代わりの靴下を両腕にハメて、
いざ!笹藪を分け入り私のホームグラウンドへ出発!行きは下り坂のルートをひたすら平泳ぎのように笹藪を?き分けながら進むこと僅か5分ぐらいで、
目的の小さな尾根と尾根の間の小川にも満たない川が流れる谷に。わたしの取って置きの場所に到着です。
辺りに人の気配はなく、ただ山ウグイスやカッコウなどの野鳥が自分の縄張りに現れた侵入者を警戒し、けたたましく鳴き交わし、僅かな雪解けの湧き水が谷を下る微かな水音のみが聞こえるだけです。
おもむろに東側の尾根を上りはじめようと、掴んだ笹竹の根元を、ふと見ると、すぐ目の前に「タケノコ」が生えています。
そのタケノコは長さ25㎝、太さ1.8㎝ぐらいの上物です。そのタケノコの根元を掴み、ねじ切るように引っ張ると簡単に採れます。
さらに、その周りを見回すと同じような大きさのタケノコが2?3本生えています。それを掴み、採りながらも目は辺りを見回します。と、その先にも同じように2?4本ぐらいがまとまって生えています。とさらに少し先にも、またさらに先にもという感じ...
やった!今年は豊作だ。まるで「タケノコ畑」にいるようだ!私は思いました。タケノコ採りは年ごとに気候などのコンディションに左右されます。なにせ、「雨後の竹の子」という言葉がある通り、前夜の雨と気温も高まってきたこの日は条件も最高!僅か1時間弱でリュックサックいっぱいになりました。
藪の中で一息つき、買ってきたおむすびを食べ、お茶を飲み「お?い」と誰もいない周りに向かって大きな声で叫び...。「こんな山深い笹藪のさらに奥でなければ得ることのできない事ってあるよなぁ?」だの「世の中はタケノコ採りを(する人)と(しない人)の二通りしかないのだ」などと感慨に耽りながら、呼吸が落ち着いたところでタケノコでズッシリと重くなったリュックサックを担ぎ、帰りの笹藪道を辿ります。
ただ、来るときは下り坂なので5分ぐらいの道程が、帰りは上り坂、さらに生えている笹竹は冬の間、雪に押しつぶされて山上から谷側に向かって倒れ込んでいるので、帰り道の坂を登る人に向かって突き刺すように生えています。
それらの笹竹を?き分けながら山道を登るには30?45分ぐらいかかります。ヒイヒイ言いながらようやく基の出発地点まで戻ると、身に着けている物はすべて泥だらけになります。
なんとWildなアクティビティなのだろうと一人頭の中で考えながら、無事に戻れたことに、真に生きているという充実感をかみ締めつつも手早く帰り支度を調えて、早々に家へ帰り、取ってきたタケノコの皮を1時間ぐらいかけてすべて剥き(これが一苦労)、サバの水煮缶を入れてつくる定番のタケノコ汁と天ぷらを味わいながら、今年も初物を食せた!また来年も食べられますように、と東を向いて笑いながらタケノコ汁をすする。
これが私の毎年の6月の定番です。