浅間山で青天を衝く
すっかり登山トレッキングの魅力にはまった長野クリエイティブ局のY. H.です。
いよいよ全国的にも有名な浅間山にチャレンジしてみました。浅間山といってもまずは噴火口のある前掛山ではなく、優美な姿が周りから眺められる外輪山コースへと出かけました。車坂峠の駐車場から登山コースに入り、火山らしい赤い石や黒い軽石を踏みしめ、噴石避難用シェルターを過ぎ、樹林帯を抜けると、槍ヶ鞘という絶壁の向こうからいきなり浅間山の巨体が現れます。「...出た!」
--この山はまるで女王様のようだというのが第一印象。山肌は滑らかで張りがあり、富士山型の美しい姿は気品を感じさせ、さらに火口を囲む噴火丘がまるで冠に見えます。そして周りを剣ヶ峯、牙山、トーミの頭、蛇骨岳、仙人岳・鋸岳・・・という、まるで甲冑を着た近衛兵のような荒々しい外輪山が数百メートルもある崖を伴ってそそり立っています。浅間山はいつも噴煙を上げ緊張感を漂わせていますが、いざ噴火したら手が付けられないところも何か女王様の貫録を感じてしまうなんて言ったら偏見でしょうか。--
さらに崖伝いに砂礫が崩れるルートを注意深く登っていきますが、いつ噴火が起こるかもしれないというドキドキ感が拍車をかけます。やっとの思いで外輪山の最高峰 黒斑山にたどり着き、頂上に立って周りを見渡すと、NHKの大河ドラマ「青天を衝け」のタイトルが浮かんできます。実際は渋沢栄一が行商に行く途中で登った内山峡(現在の長野県佐久市付近にある峡谷)での心境を漢詩に詠んだものですが、その意味「青空をつきさす勢いで肘をまくって登り、白雲をつきぬける気力で手に唾して進む」と今の気持ちがオーバーラップしてきます。この瞬間は本当に世の中のコロナ禍やその他のしがらみをすべて忘れさせ、希望の未来を暗示するかのような高揚感に包まれます。
この気持ちを味わうため、人は山に登るのかもしれません。