ミミズと共に。
松本支社ディレクターのWです。
自然農栽培の畑に切り替えて、早15年近くになる。最初の頃は試行錯誤もあったが、最近は土の中に暮らす微生物たち土壌菌とミミズを代表とする土壌生物の活躍のおかげで作物が育っている。土の中で餌を取り合ったり、分かち合ったりと共生する彼等は、植物からの栄養をもらいつつ、土壌の栄養のバランスを保ってくれている。だから、彼等が住みやすい環境を整えるのが私の役目と言ったところだ。
中でもミミズには大いに助けられている。とにかくミミズは有機物を何でも食べる。1日に自分の体重の半分にあたる量を食べるという。ミミズの腸の優秀な腸内細菌によって栄養豊かな団粒状の糞が排出され、排水性と保水性のよい土をつくってくれる。もちろん、糞の栄養は植物の好物ばかりだ。(ミミズの糞は周辺の土壌と比べて窒素、炭素が多く、作物に吸収されやすい形のカルシウム・マグネシウム・カリ・リン酸も豊富。また、アミノ酸の種類や含量も多い)
それに、ミミズは、熱すぎる土壌や、冷たすぎる土壌、さらに、乾燥しすぎていたり、湿りすぎていたり、酸性が強すぎていたりアルカリ性が強すぎたりするような土壌には耐えられないから、ミミズが元気に暮らせるというのは、健康な土壌のシグナルにもなっているという。
最近、もっとミミズについて知るために、金子信博著「ミミズの農業改革」を購入し、読み進めているところだ。金子信博さんは、現在、福島大学食農学類教授で農学博士。土壌生態学、森林生態学の第一人者で、特にミミズの偉大さを説いている。
◎一節を紹介したい。
ミミズには背と腹がある。先端に口があり、尾端に肛門がある。口は水平に切れ込むが、肛門は縦に切れ込んでいる。人と似ていて面白い。
ミミズは体液が詰まった長い袋をさらに隔壁で細かく分けたつくりをしている。体を長く伸ばすと細くなり、反対に短くすると太くなる。体を細くすることで土の隙間に入り、太くすることでトンネルを広げることができる。体節の表面には剛毛が生えている。剛毛は体の後方に向かって伸びているので、前進するときに土にひっかけて、トンネルの土を支点に前に進む。後進するときは角度を変えることができる。
ミミズは体表に粘液があるので、土の中を移動しても体が汚れる心配はない。
硬くしまった土では、ミミズは土を食べることによって穴を空けていく。食べた土は後方に排泄する。(芝生の上に小さな土の粒がかたまって乗っているのを見たことがあるかもしれない)
普段は気にしていなかった、ミミズの穴を掘る生態機能には、改めて感心する。
◎ミミズとモグラの関係も興味深かった。
トンネルを掘る生活はモグラにも共通する。モグラはミミズを主食とする。ミミズは土壌の表層に多いので、モグラのトンネルも土壌の表層を走っている。トンネルがトラップの役目を果たし、トンネル内に出てきたミミズをモグラはすばやく移動して食べる。
私の畑は、おかげさまでミミズが多いが、そのためモグラもかなりいる。それだけならいいのだが、モグラの穴を移動して生活するネズミもたくさん住んでいる。奴らは地中から根を食べながら地上の野菜たちを食べまくる。初冬は長ネギや白菜が標的になる。
食べ残しは、やがて細菌が分解し、ミミズのエサになり食物連鎖は巡っていくのだが。
自然農的な畑では、ネズミ対策はもっぱら猫くらいだが、我が家の猫は今は屋内猫なので、ネズミのエサになる分も見越して多めに栽培するのが現状だ。
Living with Nature(自然と共に生きる)であり、Living as Nature(自然として生きる)のであれば、致し方ないことだろう。